季節の健康と漢方 - 五月病

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五月病

五月病(ごがつびょう)とは、「4月に新しく入った学生や社員などに、5月頃しばしば現れる神経症的な状態」(出典:『広辞苑第七版』岩波書店)とされています。医学的な用語ではなく、同じ時期に多くの人に見られる傾向があるということで、社会現象のひとつとして作られた名称です。
環境が大きく変わるなか、4月のうちは一生懸命にがんばっていても、大型連休が明けた5月頃から気力が低下してしまうことから、五月病と呼ばれるようになりました。
症状としては気力低下、倦怠感、食欲不振、不安、イライラ、焦燥感、不眠などがあります。

対処法

一般的に、真面目な人ほど五月病になりやすいといわれています。
つらいと感じていても無理をしてがんばってしまったり、弱音を吐いてはいけないと一人で抱え込んでしまったりすると、ストレスが積み重なってしまいます。
五月病は環境に慣れれば自然と改善されることもありますが、憂うつな気持ちが続くと心身の不調に繋がることもあります。
ストレス発散を心がけ、楽しい気持ちで春を過ごしましょう。

ストレス発散 イメージ

東洋医学の視点から

東洋医学では、万物は「木・火・土・金・水」の5つの属性(五行)に分けることができ、季節や五臓六腑も分類されています。何がどの属性にあたるかをわかりやすくしたものを「五行色体表」(右図)と言います。

春は五行の木に分類され、五臓の肝も同じく木なので、春は肝が活性化する季節です。肝は血を貯めるはたらきや気の流れをコントロールするはたらきがあるので、肝のはたらきが乱れると憂うつ、イライラ、不眠などが現れます。

五行色体表 イメージ

養生~春の過ごし方~

東洋医学には、健康に生きるための日々の過ごし方として「養生」という考え方があります。中国の伝統医学書『黄帝内経(こうていだいけい)・素問』のなかでも、季節に合った行動・食事・睡眠などの暮らし方や、精神的に安定して過ごすことについて説かれています。
春は、肝が疲弊しないように穏やかに過ごすことが大切です。早寝早起きを心がけ、適度な運動や散歩などで気分転換をしましょう。食事面ではタケノコなどの旬の食材や、鉄分が豊富なホウレンソウなどがおすすめです。また、酸味のある柑橘系の果物も気のめぐりを助けてくれます。

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おすすめの漢方薬

処方名こんな方に

さいこかりゅうこつぼれいとう

柴胡加竜骨牡蛎湯
比較的体力があり、不安やイライラを感じ、ちょっとしたことで驚いてしまう人の、神経症や高血圧に伴う動悸・不眠などに。

しぎゃくさん

四逆散
胸腹部に重苦しさがあり、不安感がある人の、胃炎、胃痛、神経症などに。

はんげこうぼくとう

半夏厚朴湯
気分がふさぎ、のどに物がつかえる感じがする人の、不安神経症、神経性胃炎、せきなどに。

かみきひとう

加味帰脾湯
体力中等度以下で心身ともに疲れ、イライラや不安感がある人の、貧血、不眠症、精神不安などに。

けいしかりゅうこつぼれいとう

桂枝加竜骨牡蛎湯
体力中等度以下で、疲れやすく、ささいなことが気になる人の、不眠症、神経症、眼精疲労などに。

さんそうにんとう

酸棗仁湯
体力中等度以下で、心身ともに疲れて眠れない人の、不眠症、神経症に。

にんじんとう

人参湯
体力虚弱で疲れやすく、手足が冷えやすい人の、胃腸虚弱や腹痛などに。

ほちゅうえっきとう

補中益気湯
体力虚弱で気力がわかず、手足がだるい人の、疲労倦怠、食欲不振、ねあせなどに。

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